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総 括 北海道都市地域学会企画委員長 千 葉 博 正 |
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ただ今ご紹介いただきました札幌大学の千葉でございます。企画委員長として、なぜこのテーマを取り上げたのかをお話し、今日のまとめのスタートとしたいと思います。 そもそもの動機は、最近は「新たな公」とあちらこちらで言われていますが、これは一体何なのかということです。皆様方は既にご存知かもしれませんが、企業、NPO、社会的企業化など、幅広い非政府主体、非営利団体、そんなようなことを全部まとめて「新たな公」と言っていたり、様々な議論があります。そのように捉えどころのないものを手がかりにして、これからの地域おこし、まちづくりについて何かヒントを得ようというのが、最初のきっかけでした。そうすると、主体の捉えどころがない上に、現象も複雑である。これを解明していくためには、有能で信頼できるナビゲーターが必要であると考え、斯界の第一人者である黒川先生にお願いしたわけであります。 黒川先生のお話から、私共が当初期待した様々なヒントを与えていただきました。まず、都市が抱える様々な今日的課題を幾つか取り上げていただき、様々な側面から言及されました。今後の方向として、脱車社会と申し上げてよいかと思いますが、集約型都市構造への転換をお示しくださいました。このことは、私共が今後勉強する上で、新しい視座を与えていただいたと思います。 黒川先生のご指摘に導かれ、第一セッション、第二セッションで縷々議論を進めて参りました。第一セッションは佐藤先生、第二セッションは田村先生にまとめていただきました。ただ一つ、私から申し上げておきたいのは、第一・第二セッションで議論いただいたことは、様々な地域活動における、多面的な実相をご紹介いただいたと思います。その多面的な活動を、パブリックだとかセクターの関係で見るのではなく、裏側から見てみると、一つのことが言えるのではないか。それは、太田先生が最後に強調された「Social Capital」であります。太田先生はイタリア周辺からと言われましたが、まさにこの概念はハニファンというイタリアの学者によって、1916年頃に出されたのが最初だと言われています。また別な論文によると、1900年代初めからあるという指摘もあります。 「Social Capital」を日本語ではどう訳すのか。そのまま当てはめれば社会資本ということになりますが、インフラを中心にしたような、ハード系の社会資本ではないということです。公共財としての社会資本ではないということです。では、どういうものか。社会関係資本と呼ばれているわけです。 これがごく一般的な理解の仕方ですが、私は本日メモをとりながら拝聴していて、さすが我が都市地域学会の先生方は慧眼であると思ったのは、太田先生は「規範」だと言われました。原さんは、「信頼のシステム」と言われました。私は、まさにその通りだと思います。まちづくりに関して「Social Capital」を考えていきますと、古くは1900年初めの頃からでありますが、ジェイコブズ、社会学を勉強すれば必ず登場する大変有名な社会学者ですが、この人も1961年代くらいに「Social Capital」に言及しています。非常に大事な概念でありますが、理解を助けるため、誤解を恐れずに日本古来の表現で言えば、「人脈」であり「コネ」であり、「顔の広さ」といったことも含んだ概念であります。ただ、あまりそのことを強調すると、太田さんや原さんとは少々ずれた理解になりますので、慎重に言葉を選ばねばなりませんが、人間の関係性、人間関係の資本、別な言葉で言えば、地域の資源でもあります。 それを上手く使いながら、まちづくりを展開することが非常に大事であろう。 そして今「Social Capital」については、二つのタイプがあると言われています。それは、結合型と橋渡し型であります。それぞれを使いながら、上手くその地域に合ったSocial Capitalの充実を図っていくことが非常に大事であります。本日の大きなテーマである「地域主権時代における市民主体のまちづくり」、これはまさに、それぞれの関係性をいかに信頼の高い、充実したものにしていくかが根底に流れております。最終的な目的は、地域文化の具現化であり、それぞれの地域のライフスタイルの確立と言えると思います。これを今回の総括とさせていただきます。 一方で、一言で表現してしまえば、今日の議論の様々な側面を捨象してしまう恐れもなきにしもありません。ただ、積み残した部分は、今日ご参加頂いた皆様方の課題ということにさせていただき、総括とさせていただければ幸いです。 本日は、これだけ多数の皆様が、遅くまで討議に参加してくださったことに御礼申し上げ、企画委員長としての総括と御礼に代えさせていただきます。本日はどうも有り難うございました。 |
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