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パネルディスカッション
第二セッション
「新たな担い手によるまちづくりの推進と連携強化方策を考える」 |
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コーディネーター室蘭工業大学建設システム工学科教授 田 村 亨どうぞよろしくお願いいたします。 まず、どういうことを議論したいのか、ご説明申し上げます。“公”と“民”を混同してはいけない。“民”の方に知恵があって、この知恵を上手く使って、今まで“公”が行っていたあるサービス、例えば住民サービス、公共サービス、その部分を“民”主体で上手くこなしていけなか、というのが話題だと思います。“民”だけの部分ですと、お金など色々な面で“公”の助けが必要で、“公”は手ぐすねを引いて、施策を以って援助するのを待っているはずですが、“民”の意見を“公”に伝える役がいない。中間組織ということで、タウンマネージャーの話等いろいろありますが、公共の人でもだめですし、大学人でもだめです。“民”が本当にほしいものを、“公”にきちんと伝える役として、世界中でこの中間組織をどう作るか議論していると理解しています。 ![]() 皆さんのレジュメの後ろにあるのですが、ウサギみたいなものがタヌキに変わる話です。左側のウサギに見える、耳が離れている部分が昔です。行政の部分が比較的大きかった。それを取り囲むように公共があった。企業と住民がいた。それが、少子化も含め財源が厳しくなり、行政がどんどん機能を弱めていく。もしも行政サービス、公共サービス、住民サービスであれば、“公”最低限の行政サービスだけやろうというくらいの話になっていないか。ところが、公共サービスは少子高齢化も含め、豊かな社会、成熟社会ということで、ニーズがどんどん広がっていく。その公共サービスの部分を誰が行うのか。行政はできないのですから、今までの企業や住民が公共サービスに入り込み、お手伝いするということであります。ですから、一緒になってやるのではなく、“私”の部分が自立してやることが大事だと思います。 黒川先生の少子高齢化、長寿社会、地球温暖化のお話で、北海道のみならず、日本全体が縮退していく。これをどうやって活性化していくか。生活の質を向上させれば、アクティビティが上がってくるということですが、新たなことを具体的に始める際の問題点は、住民や企業が公共サービスを創出、起業することです。この時に、黙っていたら“民”はボランティア活動などやるわけがないという話です。起業の原資は、企業はあくまでもお金、住民は労働力です。目的もなく、ただで労働力を出す住民がいるだろうか。これは安田さん等がまとめてくださった話に近いのですが、私は住民の共感、シンパシー、まちづくりの共同イメージを持っていないと、何も始まらないのではないかと考えております。企業は企業でお金を持っていますから、そのお金を自分の収益拡大のため、地域の信頼性向上のためにCSRとして出資するだろう。学問的にはいくらでも描ける話です。ここまではだいたい皆が分かっていることだと思いますが、パネルディスカッションの前半は“公”と“私”の関係の議論ですが、後段は具体的な方策として、“民”の企画づくりとその運営としました。この辺りを題材にして、議論を進めていきたいと思います。 ![]() 最初に議論して頂きたいのは、“公”と“私”の関係はどうあるべきか、自分の経験を踏まえて各人からご紹介頂きます。その後、組織を理解した上で、まちづくりの活性化のために、“私”は何をすればいいか、“公”は何をすればいいか、具体的な話に言及できればと思います。 太田さんから説明等、よろしくお願いします。 パネリスト札幌学院大学大学院教授 太 田 清 澄よろしくお願いいたします。お手元のパンフレットに私の経歴と顔写真が載っております。この写真をよく見ると、背景にある机の周りが相当乱雑なのがお分かりになると思います。何を言いたいかというと、本やら資料やらの整理の乱雑さから窺い知れるように、私は大変アバウトな性格な人間だということです。そんな私ですから今日のためのレジュメも特にはご用意していませんし、パワーポイント等の資料も不完全なものしか準備してありません。その点はお許しくださいという先ずは言い訳からです。 田村さんから、私の経験則から少し話をと言われましたが、基本的には非常に貧弱な経験しかないので、的確にお答えできるかどうか不明ですが、議論の提起になるように少し挑発的な視線を持って話を進めていきたいと思います。 冒頭で、今日のテーマについて田村さんから解題頂きましたが、改めて私なりにこのセッションのテーマを整理してみました。今日のテーマは3つのサブテーマから構成されているのだと思います。それは「新たな担い手」、「まちづくり」、「連携」の3つです。 今日はこの辺に拘って、少し強引にストーリーを組み立てて話を展開してみたいと思います。 先ずは「新たな担い手」、「まちづくり」、「連携」のテーマが具現化している事例紹介をし、次いでこれらの事例の論理的裏づけもしくは背景となっているキーワードを提示していきたいと思います。私が特に拘りを持つキーワードについて3つほど挙げたいと思っています。 一方的に聞いていると眠気を模様します。眠気覚ましに少しお手を動かして、お手元のメモ欄にこれらのポイントを書き留めてください。 第1の話題提供として事例紹介から始めたいと思います。1つ目は道内事例としての美幌町のケースです。借り上げ公営住宅の話です。中心市街地活性化の具体的戦略として、「まちなか居住」を増やしていくためにはどうしていけば良いのか。先ず一部の議員が動きました。議会において、中心市街地に公営住宅計画戸数の8割を造る事を議決しました。確かそれまでは郊外部と中心部での比率が、概ね6:4から5:5レベルであった計画戸数を2:8に変更したのです。その基本方針を上手に利用して、一部の事業者が、官と連携しながら公営住宅のバリエーションとして借り上げ公住を建設していったのです。地方都市としては決定的な集客力施設の一つである郵便局の移転計画と連動する複数の住宅計画をつくり、まちの顔づくりに成功した事例だと思っています。同時に利害の異なる4者がそれぞれの利害を理解し合いながら最適値の組み合せを試行したケースであったとして捉えています。 道内2つ目の事例は岩見沢市の事例です。岩見沢市では、市内の若手の建設事業者の方たちと空知信金がタイアップし「PFI勉強会」を立ち上げ、新しい事業業態の可能性を真剣に考えております。また、この会場のすぐ近くに「なかのたな」と呼ばれていた昔の市場がありましたが、今その場所にマンションが建設中です。ここでは時間が余りにもありませんので、事業概要は詳しく説明できないのですが、後日是非ともこの仕組みを関係者から十分にヒアリングされることをお薦めします。このプロジェクトからは地域金融機関と地元事業者、コーディネート力を持った市民組織の三者の協働関係が読み取れると思います。更にはこのマンションのマーケットの主力対象(客)である教育大の学生を企画段階から参画させたことの効果が随所に見られると思います。キーポイントは何か・・・まさにこの場合も「組み合わせ、すなわち連携と協働」です。 次いで国内事例です。今からお話しする長野県の小布施町に行かれた方はおられますか。「まちづくりの担い手」というテーマに係わる先進的成功事例を語る場合必ず出てくる町です。特に私が小布施町に拘るのは、私自身が長野県の松本の生まれですので、小布施は同じ故郷です。それで故郷の宣伝をしようと、どこへ行っても小布施町の話を申し上げています。この「まちづくりの担い手」の国外事例としてよく出て来るのは、スペインのバルセロナです。バルセロナでは内乱後のまちづくりにおいて、「ミクロの都市計画」あるいは「個から全体へ」と表現されている新しい仕組み所謂「バルセロナモデル」を生み出しました。先ほど黒川先生から、富山市のLRTの話がありました。このなかで私は特に「運行のためのインセンティブとしての税金免除」という部分が印象に残っています。LRTに関してはフランスのストラスブールという街での展開が最も有名です。街のシンボルであるLRTを動かすために、交通特別法を制定し勤労者から1.75%の源泉徴収を行いLRTの運行赤字に充当しています。LRTを街のシンボルとして位置づけ、環境文化政策を都市政策の基軸とすることについて、このようにして市民の合意形成をも取り付けているしたたかとも言える都市政策を垣間見る事が出来ます。 ここまでに美幌町、岩見沢市、小布施町、バルセロナ、そして黒川先生の話の延長上で急遽付け加えたストラスブールの事例について急ぎ足で紹介してきました。 続きましてこれらの事例の論理的裏づけもしくは背景となっているキーワードについてです。これについても皆さんのお手元には、きちんとした資料が用意されていなくて申し訳ありません。自己宣伝になりますが、今からお話しする内容は「北洋銀行調査レポート6・7月号」に、約20ページにわたって詳しく掲載されております。北洋銀行のホームページからかあるいは銀行の窓口で現物を入手できますので、後日是非精読いただきたいと思います。 キーワードの1番目は、「New PPP」です。PPPとは、public、private、partnershipの頭文字です。PPPを概略的に説明します。保守党政権のサッチャー首相の時代に行政改革の柱としてPFIが推進されましたが、その過程において多くの場面において予期しない反動が出て来ました。そこでPFIのもつ欠点を軌道修正しながらその対抗軸として労働党政権のブレア首相が打ち出し政策がPPPです。我々は敢えてこのPPPの前にNewとつけました。このことに対して相当な議論がありましたことも事実です。何を以ってNewなのか、冠を安易につけることは認められない等という議論が、我々の間でもかなり激しくありましたが、意に介さずNewPPPと私は言い続けております。 図を見ていただければお分かりの通り、今までの社会通念として行政、市民(住民)、企業の三つのセクターがありました。New PPPの意図する所はスキルアップを必ずや実現した従来の3つのセクターに、NPO、コミュニティビジネス、PFI・RFPなどの組織や形態が加わり6つとなったセクターが、それぞれにステークホルダーとしての意識を持ち、それぞれの立場から相互にかつ統合的に連携を図っていくものです。これは「新たな担い手」像といえます。スキルアップされた三つのセクターとは以下のようなイメージです。市民セクターにおいては行政に操られるレベルの住民ではなく、シチズンシップを持った住民すなわち本物の市民になる事が必須です。また行政セクターにおいては、行政マンはNPMを目標像の一つとして、地域の顧客満足を満たす組織となるべく真剣な気持ちで顔を洗い直し、衣装を着直してから舞台に上がってきてください。企業においては昨今問題になっているコンプライアンスなどは議論以前の問題です。先ほど出ていたCSR・企業の社会的責任まできちんと企業内で整理して土俵に上がってきてくださいということです。特に地域の企業には期待する事が大きい。なぜならば地域を動かす時、地域を再生していく時、ボランティア活動や関係者の意志、思いだけでは地域が変わることは難しいのではないかと思っているからです。決定的にそこに必要なのは企業力や経営力のセンスです。企業以外でも市民はコミュニティビジネスは起こしていけますから、市民セクターにおいても是非とも企業力や経営力の感覚を身につけていただきたいと思います。 ![]() ![]() ![]() ![]() 2番目のキーワードはRFPです。RFPとはrequest for proposalの頭文字です。これも時間がありませんから詳しくは説明できないのですが、要するに官と企業が対等な立場で、かつ相互の良いところを出しあって真剣勝負するプロジェクト形態です。その時に一番大事なのは、コーディネーターの存在であり、この役割は、地域企業が担うべきだと東洋大の根本さんは主張しています。先ほど岩見沢市の事例のなかでお話したとおり、PFI勉強会のコーディネーター役として空知信金の中枢の方が真剣に関わっていました。その意味で、岩見沢市はこのRFPの仕掛けのモデルケースになっていける可能性が大だと思っております。 最後に三番目のキーワードです。皆さんの前に示していますのが、小布施町のまちの再生の図面です。このエリアは小布施町のまち再生の起点となったポイントですから、皆さんもこの図面は色々な所で一度は目にしたのではないかと思います。ここで「エリアマネージメント」という三つ目のキーワードを示したいと思います。再度申しますと、今日の3つのキーワードとは、@NewPPP、ARFP、Bエリアマネージメントですが、小布施町におけるここでの展開はエリアマネージメントの実に好例だと思っています。小布施堂というお菓子屋、造り酒屋、信用金庫、小布施町、個人の民家2軒が協働でまちの顔を創り出した「地方都市におけるエリアマネージメント」としてのプロジェクトです。お手元の完成図を見てください。この図面でいえば、丁度この辺にあった民家2軒を、少し離れたこのポイントに曳家で移動させ、その跡地には信用金庫が新築移転し、信用金庫の土地を町が買い取り、その一部を造り酒屋に売りました。用地を買い取った造り酒屋は、既存の蔵と隣接地に既にあった小布施堂のデザインと調和させた店舗展開を図りました。残りの用地は小布施町が町営の駐車場・イベント広場にしました。玉突き方の整理をし、5者の誰もが損をしないというエリアマネージメントです。 地理的に見て、首都圏3000万人という大マーケットに近いという条件があることを差し引いても、年間300万人前後の観光客が訪れている結果は大きく評価されるべきものだと思います。この最初の成功に触発されて、まちづくりのうねりは大きく町全体に広がっています。バルセロナモデルの読み替えと言ってよいのかもしれません。全体を考えるのではなく、やれるところを突破すれば、全体に波及していくだろうという読みです。成功に繋がる可能性の高いエリアを選択し、そこで成功モデルさえ作れれば、全体に波及する。全体のことを考えるのはあまりにも課題が多すぎること、併せて全ての課題解決を図っていくためには必要となるそれだけのお金もエネルギーもないのが現実です、それだからこそ個から全体というエリアマネージメントが必要だと思います。今日のテーマ「新たな担い手」「まちづくり」「連携」に関する事例とそれらの事例の論理的裏づけもしくは背景となっているキーワードについて述べさせて戴きました。少しでもこれからの熱い議論のきっかけになればと思います。 田村(コーディネーター) 有り難うございます。引き続いて、大学とまちづくりの事例として、佐川さんにお願いします。 パネリスト北海道教育大学副学長(岩見沢校担当) 佐 川 正 人岩見沢校の佐川です。今は副学長という職に就いていますが、少し前までは、大学の中の地域連携という委員会の委員長でした。主に岩見沢校の将来像を重ね合わせる意味で、岩見沢市の中で、学生の地域連携的な活動ができないかと進めて参りました。今日は色々な事例をご紹介したいと思いますが、畑違いで、太田先生が言われたことが全然分かりませんでした。後から、活動事例について分析して頂ければと思います。 まず、教育大学がなぜ、今回のテーマにあるようなまちづくりに関わるのかということで、若干大学の組織の変更についてご紹介したいと思います。平成18年から変わったのですが、その前は、北海道にある5キャンパスが、それぞれ同じような仕組みで学生を教育していました。法人化を迎え、大学が独自で経営する状況に差しかかり、特に岩見沢は教員養成を外し、芸術とスポーツに特化した新しい課程を模索しようということになりました。本来ですと、教員養成一本で今まで行っていました。教育大学という名の通り、教員養成を中心に行ってきたので、果たして岩見沢で何ができるのか、まさしく危機でもありました。ただ、発想を変えますと、危機は次のチャンスにつながることもあり、昨年から岩見沢の特徴である芸術とスポーツを中心に、何か新しいことができないかと、地域連携関係で色々模索して参りました。特に、芸術とスポーツのねらいとなるものを出しました。芸術のねらいは、地域社会において様々な文化、芸術シーンを演出できる人材の育成。これは大学の目標にもなっております。また、スポーツ教育課程のねらいは、人々の健康と、地域社会に貢献できる人材の育成です。具体性はないですが、これからの岩見沢校の方向性を示す上では、非常に斬新なねらいとなりました。 この新しい岩見沢校が、どういう活動を行ってきたのか。昨年からですので、あまり多くはありませんが、その中からかいつまんでご紹介します。主に岩見沢市周辺での活動ですが、まず、今年で3年目になる、サッカーを専門としている先生の活動です。主に中学生、部活動でなかなか活躍できない1年生を対象に、複数の中学校から子供たちを集め、これから指導者になり得る教育大学生をコーチにし、年5回くらい指導研修を行いました。また、新しい能力の開発のために、中学生を招いて指導をしています。これも一つの地域での活動になると考えています。 それから、もう5、6年の活動になりますが、これもスポーツ関係です。小学生の子供たちを川の中で活動させる。これに伴って、夏休みにキャンプ活動も行っております。小学校の教育活動の一環というよりは、学校活動以外の自由な時間の中で、子供たちに川下、カヌー、キャンプの活動を行っています。子供たちには非常に好評で、毎年夏休みに行われています。 昨年12月に行ったのは、子供対象ではなく、高齢者で足腰が弱り、これから健康を中心に考えねばならない方たちに、スポーツというよりは、健康のための運動実践をして頂こうと、保健センター等と連携して、大学の中で介護予防に適した運動を実践して参りました。岩見沢市民へのスポーツ的な関わり、地域連携として3点ご紹介しました。 次に芸術ですが、音楽面では、今まであまり音楽的な活動の紹介がなされていなかったので、講座の先生が市民向けに、「まなみーる」等の会場を借りてコンサートを開いています。相当の回数開いており、市民であれば無料で参加することができます。こうした専門的な音楽家のコンサートの他に、子供向けに、音楽を楽しく体験してもらう試みも行っています。例えば、琴は日本古来の楽器で、それに民話を重ね合わせ、子供たちに民話と古来の楽器とのコラボレーションによる、楽しい活動をしてもらおうというものです。同様の活動の延長に、「日向っ子」という、小さなお子さんをお持ちのお母さん方が集まり、音楽や映像を活用しながら語らうという企画も行っております。これもかなり好評であります。 美術系では、岩見沢市内のビルに、美術系の学生が絵を描いています。多くの市民の目に触れることになるので、教育大もずい分変わったという評価を頂いています。6月に岩見沢駅舎が新しくなりましたが、旧プレハブの駅舎が撤去されることになり、その旧駅舎で、動物たちが集まって感謝するという企画を立てました。これは岩見沢市ほかのコラボレーションで行いましたが、非常に好評で、岩見沢市の美術系の学生が大きな壁画を描いたと、非常に大きな評価を頂きました。最近には、お祭りの際に案山子を作りました。これもすごい発想だと思いますが、学生が作ったものを店の前に展示する。駅前の商店街には活気を失った店もあるので、イベントとして案山子制作を企画しました。最近はパンフレットが出て、16の店に学生制作の案山子を展示している。「案山子とまち合わせ」、街と待ちをかけた企画であります。駅前を中心とした商店街の中に、学生が独自に作り上げた案山子を展示して、市民の皆さんに足を運んで頂こうという企画を行っています。 数ある中で十ほどご紹介しました。これが、大学の教員、学生による事業・活動です。ただ、これがまちづくりに即座につながるとは思っていません。大学のねらいになるのは、専門的な学生教育なので、その教育を行う過程で、その活動が、岩見沢市または近隣のまちづくりに貢献できれば非常に幸いだという思いで、昨年から取り組んでおります。今後の経過については、後ほどご報告させて頂きます。 田村(コーディネーター) 一つ質問いたします。学生たちの出身ですが、本州からもたくさん来ていますか。 佐川(パネリスト) 多くはないですが、本州からも来ております。学生は“よそ者”でして、先ほどのお話にあったのは、まちを変えるのは「よそ者、若者」そして、美術・音楽・スポーツの馬鹿ですから、そういう意味では三拍子揃った学生が岩見沢で活動しているということです。 田村(コーディネーター) 先生方は全国からですね。 佐川(パネリスト) 本州の大学で勉強された方が来ております。 田村(コーディネーター) 有り難うございます。次は原さんにお願いします。 パネリスト(社)北海道開発技術センタ−理事 原 文 宏私は交通に関係して、観光、地域づくり、その他のプロジェクトを行っていますが、今日のテーマに副って、私の事例を二つ紹介いたします。 一つは、シーニックバイウェイ北海道、もう一つは公共交通で、当別で行ったバスの再編です。 まず、シーニックバイウェイ北海道ですが、私は有限責任中間法人シーニックバイウェイ支援センターの立場と、社団法人北海道開発技術センターの二つの立場で、シーニックバイウェイ北海道について報告いたします。 シーニックバイウェイ北海道には、色々な解釈がありますが、我々の統一的な説明として、“みち”をきっかけとして、地域の方々が主役となり、行政や企業と連携しながら、広域的に美しい景観づくり、活力ある地域づくり、魅力ある観光空間づくりに取り組んで、最終的に愛着と誇りの持てる地域を実現する取り組みであります。重要なポイントは、まず地域の方々が主役です。住民参加ではなく、地域発案型で、行政参加型のシステムです。大きなキーワードは連携と広域性です。一つのまちだけでなく、もっと広域で色々な方々が連携する取り組みです。この取り組みは、北海道開発局が主体的に進めてきており、全国では日本風景街道というプロジェクトで動き始めている、北海道発のプロジェクトです。 最も特徴的なのは、まず地域の方々、NPOや任意団体の方々が、この地域をどうしたいかという地域発案によるルート運営計画を作って初めて動き出すプロジェクトだということです。つまり、岩見沢市役所がやりたいといってもプロジェクトは動かず、岩見沢市民で、この地域で市民活動をしている方々がまとまり、ルート運営代表者会議を作り、ルート運営計画を策定した上で、シーニックバイウェイ北海道推進協議会に提案して初めて動き始めるものです。一見、国の主導のように見られがちですが、基本的には今までと全く逆の進め方で、行政の方はかなり戸惑われます。 シーニックバイウェイ支援センターがもう一つの特徴で、最初から活動団体やプロジェクト全体を支える仕組みを内蔵しております。当支援センターは、北海道全体のシーニックバイウェイのプロモーション、人材育成等を行います。お手元の「SCENE」という冊子は、シーニックバイウェイ北海道の機関誌ですが、現在25万部印刷しています。その40%を道外で配布し、60%を全道で配布していますが、こうした広報活動を行う機関です。 また、地域では、行政機関の方々やルートコーディネータが、各ルートの支援・調整を行う体制もあります。ですから、プロジェクトが出来上がってくる流れが全く逆であることと、支えるシステムを内蔵している点が、シーニックバイウェイ北海道の特徴です。 さて、三つの連携要素ですが、柱にしているのが景観と地域づくり、観光振興です。ただ、それぞれ独立しているのではなく、循環するシステムにしたいと思っています。例えば富良野や美瑛は、農村景観で有名で、たくさん観光客が来ます。しかし、その農村景観を作っているのは、農家の方一人一人です。現状を見ると、観光のベネフィットが農家の方に循環しません。農家の方々は、後継者問題等を含め、離農される方もいて、荒地のパッチワークになりかねない面もあります。ですから観光のベネフィットが農業にも循環し、農業が営める環境で農村景観が維持される地域を作っていかなければならないと思います。循環させるところに、シーニックバイウェイの活動がうまく機能していけばいいと思っています。同じように、知床も世界遺産になって観光客が殺到し、観光的なベネフィットがありますが、もし過剰な観光客がこの地域に押し寄せ、環境保全にそのベネフィットが回らないと、結果として世界遺産を食い潰すことになりかねない。シーニックバイウェイ北海道では、こういう地域の循環を上手く作っていきたいと考えているわけです。 現在、指定ルート6、候補ルート3になっており、参加団体242団体、少なくとも数千人が参加しています。なおかつ、札幌市の南部、帯広市周辺、道南の江差町周辺地域などで、候補ルートを目指した模索する動きがあります。実際の活動としては、景観づくり、地域づくり、観光空間づくりなどに関連して、地域の方々が様々なことを行っています。 例えば、洞爺の活動団体の一つが行っていたゴミ拾いが、シーニックバイウェイの活動の中で、453号沿線に広がり、連携と広域化の効果が現れております。また、オーストラリア観光客はニセコにしかいませんでしたが、支笏湖や洞爺湖に連れて行こうという活動もはじまっています。決して順風満帆ではなく、問題は日々発生しています。それを一つずつ時間をかけて解決していくことも活動の一つです。 今までは、景観と地域づくりと観光でしたが、最近、もう二つの柱が追加されました。観光に関係しますが、一つは外国人観光客対応です。道内への観光入り込み数の内、国内観光客は横ばいか減少していますが、トータルして上がっている原因は、外国人観光客のおかげです。一年間に約50万人が来ており、そのうち27万人は台湾です。しかも9月19日に道路交通法が改正になり、台湾の方にも国際免許が発行されることになったため既に個人旅行客で10数名、ドライブ観光に来道しています。また、10月初旬に初めて、マレーシアからドライブ観光客が約70名来て、主に道央を走っています。シンガポールとの間では3年前くらいからドライブ観光プロジェクトが進められており、今年は6月くらいからコンスタントに、毎月10組くらいずつ入ってきています。新千歳空港周辺で、外国人観光客に貸し出されるレンタカーは、平成17年479台しかなかったのが、1年間で1,354台と3倍に増えています。今年は2,500台を超えると予想されています。 レンタカーで回ると、バスで団体で来るよりきめ細かに回れます。さらに、50人の団体客には紹介できない小さなお蕎麦屋さんや、地域のレストランも紹介できます。だいたい1台3名くらいで来ますので、シンガポールの方々の場合、お土産と食事代だけで約2万円使います。その方々が大体10泊します。千歳だけですが、千数百台×10泊×1日2万円とすると、3億円の規模になるわけです。それ以外に旅費、宿泊費がかかるわけですから、かなり経済的効果があると思います。そういう外国人観光客を、地域の方々と一緒にホスピタリティをより高くして、リピーターをどんどん増やしたいと思っています。外国人観光客に対して、支援センターでは英文観光パンフレットの配布、英語音声機能付きカーナビの斡旋、携帯電話等の貸し出し、位置情報の確認サービス等の支援をしています。 もう一つは、環境です。ドライブ観光をすると、CO2をたくさん排出するのではないか。観光振興とCO2の削減は相反すると言われることがあります。我々も環境を悪化させたいとは思っていませんから、エコツーリングとして、なるべくCO2を出さない運動を2年ほどしています。ただ、どうしても出る部分について、今年から始めているのがカーボンオフセットで、旅行者の方に、出てしまったCO2を吸収するだけの木を植える費用を、旅行代金に載せて頂いています。今年、遠別に行ったツアーでは、1人500円で、約30本植えました。つい先日も、シンガポールから来たドライブ観光客に初めて試み、ルスツ方面に約30本、木を植え、オフセット料は旅行者からもらうという取り組みをしています。 もう一つ、当別で行っている公共交通の再編です。当別はバス交通がかなり衰退していましたが、大学が患者と学生の輸送用にバスを5台ほど運行していました。また、少し離れた場所に高級住宅街があり、そのディベロッパーが最寄りの駅を結ぶバスを走らせたり、市内の病院が患者用にバスを持っており、それらを全て統合しました。それに公共的な路線を組み合わせ、今のところは実験上の協議会のような組織ですが、新しく公共交通を運営する組織を設置しました。トータルで年間5,000万円くらいで運営していますが、そのうち3,000万円強は、大学や病院、企業に出して頂いています。その他の部分が、料金収入と公的な補助です。通常バス運行は、バス事業者に行政や国が補助をして運行していましたが、地域の企業や大学と連携して運行し、かなり上手くいっています。最終的に新しい企業を作りそこが運行するのか、それとも公的な団体を作ってそこでお金を集め、企業に委託するのかは検討中ですが、いずれにしても、新しいかたちの公共交通の運営母体を作ったところであります。 田村(コーディネーター) 有難うございました。最後に渡辺さん、お願いします。 パネリスト岩見沢市長 渡 辺 孝 一私は、公と民のあるべき関係、その連携強化にどのように取り組むべきか、というテーマを与えられたかと思います。私が5年前、市長選に出馬する際、周りにいる方々が口を揃えて言っていたのは、行政サービスが非常に悪い、職員の態度が大きい、説明が十分でないということでした。あたかも、市の職員あるいは市役所が、非常に悪いがごとく言われ、立起する際に私なりに考えたのは、市民主役のまちづくりの推進でした。そのためには、今の市役所を改革しなければならない。そして、市民の皆さんが市役所の人間、あるいは行政と連携できるような仕組みづくりをやろうと、住民自治を考え立起しました。しかし、私が市長として初登庁した10月21日から2週間ほど経ってから、各種団体の要望・要請で3・4日、市長室に缶詰めになりました。その50〜60団体の方々が、10〜15分私に会いに来ますが、どの団体の要望も同じです。何かというと、補助金を削らないでほしいということです。誰が何を言ったか知りませんが、新しい市長になって、各種団体の補助金が切られると噂が流れたと、後から聞きました。皆さんが補助金を削らないでほしい、今まで受けている支援を縮小しないでほしいと言う。私は思ったのですが、選挙に出る前、官側が悪いような話を聞いていましたが、市長になってみると、民の方も態度が悪いではないか。言うならば、官依存の体質がまだ脈々と続いているのではないか。 一例を申し上げると、5万円削らないでくれという団体がありました。ところが、年会費1,000円です。自分たちの団体の活動が素晴らしいと思うなら、会員を50人増やせばいいのではないですか。その場では正直に言えませんでしたが、担当者に間接的に指導するよう言った記憶があります。単純なことでも解決することがなかなかできない、これがいわゆる官と民の関係だったのだなと思います。 そこで自分から襟を正さねばならないと、移動市長室、市長室開放を行いました。事業費は年間2・3万でしょうか。市長室開放では、市民の方々にどんどん市長室に来て頂き、個別の案件だろうと、まちづくりのことなら、何でもよいから話しに来なさいと。中には、当時まだ、市町村合併の前でしたので、広域行政や合併についての高い視点からのアドバイスや、ご助言を頂きました。一方では、市営住宅に移るので、自分の飼っている犬を保健所で処分しなければならないから、飼い主を探してほしいとか、19歳の女の子が来て、彼氏と別れたのか離婚したのか、生活保護を受けたい、そんな話もありました。市長室開放で市民の声を聞く、そして移動市長室では、各地域や団体に行って、皆さんに市行政の説明を行い、質疑応答も含めて市民と距離感を埋める努力をしました。このことは、官と民のあるべき関係の原点だと思います。それは情報の共有です。これをしっかりできずに、官と民のあるべき姿はあり得ないと思います。ホームページやインターネット、広報誌も使いますが、これだけでは不足です。ここにご参集の行政の皆さん、市民に対して断る理由は星の数ほど思いつくくらい、行政の人間は能力がありますが、何とかやってあげようとか、他に方法がないか探す能力をつけることが、官と民のあるべき関係の上で必要不可欠の努力だと思います。 官と民の中間組織についてお話がありましたが、これは大変素晴らしいし、時代の流れの中で必要だと思います。しかし、まず市民の皆さんが官依存の体質から脱却し、自らできることを発し、どうしたらまちづくりが出来るか市民側から考えること。官側からは、しっかり情報を提供・共有しながら、官がやりたいことに市民からどういう協力を得られるか、相互の関係をしっかり作っていくことが、今後の官と民のあり方、更には連携の鍵ではないかと、5年間の市長の経験から感じました。 田村(コーディネーター) 有り難うございました。皆さんにお願いしていたのは、民の企画づくりとその運営でしたが、この段階でお互いに幾つかのお話ができると思います。例えば、太田さんのお話を聞いて、佐川さんが難しいという印象を持ちながらも、最後の部分で、学生教育とまちづくり、その間の関係は「つながっていない」ということでした。例えばその辺りに関して、太田さんは「起業力」のお話、個の成功を全体へといったお話から、学生たちの教育をどう捉えてまちづくりに落とし込むか、といったこと。あるいは、シーニックバイウェイのお話で、NPOではない中間法人の扱いがいかに魅力的か、もう少し聞きたいところです。また、行政の支援の前に、成功事例を作れば、行政が頑張らなければならなくなる面があります。一つ成功例があると、広がっていく、個から全体へ、という話かもしれません。渡辺さんは、昔の公ではないという第一印象を持ちました。行政マンの能力を変えよう、入り口で閉ざすのではなく、民のニーズを汲み取り、施策に昇華する能力をつけねばならない、これはすごい言葉だと思います。その辺りで、お互い議論できる段階にきているので、太田さんから、佐川さんの大学の教育とまちづくりについて、議論を始めて頂けますか。 太田(パネリスト) 私立大学と国立大学とでは、プライベートスクールとパブリックスクールとして色々な面においての違いはありますから、教育大学は私の大学にとって直接の競争相手では無いようにも思うのですが、大学を取り巻く今日的環境からすると、やはり他の私立大学同様に教育大学も競争相手に見えてきてしまいます。ここでその競争相手に「大学の教育とまちづくり」に関して何かしらの知恵を与えていいのかという思いがあって、ちょっと躊躇しているのですが・・・・。先ほど渡辺さんから岩見沢市は素晴らしい駅舎を作り直された話を伺った、そこで例えば極端なことを言っているように聞こえるかもしれませんが、その駅舎を更に拡大して大学のサテライトなどというものではなくキャンパスにしてしまったら、どうなるだろうと想像してみました。「カルチェラタン的」構造です。我が大学にとってとんでもない敵が現れたという気がします。若い学生が常に街のど真ん中で何かしらの行動をしているという事だけで、大学も学生もまちづくりの実践的教育や活動を特別に意識しなくても、街中に相当大きな何かが起きるのではないかと思わずにはいられません。大学がこれ位の思い切った手を打ち、行政も市民もそれを受け入れるといった発想の転換があって初めて地域の大学としての存在価値が浮かび上がってくるのではないでしょうか。まちは必ず創り直されていきます。 田村(コーディネーター) 後ほど渡辺さんから、大学と市の関係をお話し頂きますが、岩見沢のホームページ、グーグル等を調べると、すぐ岩見沢教育大が出てきます。都市再生のことも、学生たちの事例も出てきます。大学の中では都市再生ではトップを切っているから、その意味でも出て来るのでしょうが、駅前の話題などわくわくします。私も大学人だから思うのですが、市の建物を学生に貸与することはできません。ですから、先生が中心となった中間法人を作り、免税措置等を含めながらやるとか、組織的なことを考えると気が遠くなります。実は、そこが成功する秘訣であり、面白いところであり、行政の知恵の出しどころなのかと思います。市長として、大学の貢献についてお話しください。 渡辺(パネリスト) コーディネーターと太田さんは話が合うようです。駅舎を大学の校舎にですか。教育大学の活動部分は駅の中に作りますし、まちの中にも拠点を作ろうとか、色々考えていますので、後ほどお話いたしましょう。教育大学と市の関係ですが、教育大学を存続させる会という市民の会があり、私が市長になって初めて会合に出席した時に、佐川副学長から説明があったように、学科転換には私以外全員反対でした。私は、芸術やスポーツは岩見沢にとって非常に有り難いことだ。現在の少子高齢化の社会現象や、生涯学習を考えれば、高齢者のこれからの健康施策は単に健康だけでなく、生き甲斐づくりだと考えています。生き甲斐には種々ありますが、芸術やスポーツの分野がかなりウエイトを占める。大学と一緒に、市民の皆さんが生き甲斐の創出に使える場面があれば、大変有り難いことだと思います。もちろん、大学の本分である学生の勉強課題に、どんどん行政を使って頂ければ、互いに良い関係を保てると思っています。キャンパスの話は、前向きに検討させて頂きます。 佐川(パネリスト) 駅舎の中にキャンパスや校舎をとは、今聞いてびっくりしました。これはひょっとすればひょっとするなと、そういう感じがして参りました。岩見沢市には大変お世話になっており、色々な施設を提供して頂いています。学生が自由に活動できる拠点としても、整備して頂いている途中なので、今後ともご協力頂きたいと思っています。 昨年からこうした活動を始め、まだ目標や最終到着地点はありません。今年もそうですが、文部科学省の現代GPというものに申請しており、面接まで行ったのですが、残念ながら具体的な教育のあり方が見えづらいという指摘を受け、今年は通りませんでした。その点を改善し、来年再度申請し直し、資金を獲得しようと思っています。資金獲得の件では、先ほど中間法人のお話がありましたが、いずれ、大学の中に学生の地域連携活動を支援するような、NPO法人を作ろうという考えを持っています。芸術の学生がまちの中で活躍できる、スポーツの学生も、例えば高齢者や子供たちを大学に呼び込み、一緒に活動する。ひいては、学生の指導力や、大学の資源としての学生の力量を、そうした仕組みの中で高めていきたいと思っています。そのベースになるのが、大学の外側にある岩見沢市というキャンパスを学生に開放し、その場で学んでもらおうというねらいを持っています。ただそれが、先ほど来申し上げているまちづくりにどのように結びつくか、今後様々な方と話し合いながら、学生教育と同時に、まちづくりに貢献できる方向性を持っていきたいと思っています。 田村(コーディネーター) 大学がそういうことをやろうとすると、大学トップが嫌がります。例えば川下りの話など、事故があったらどうするとか、責任の所在とか、材料費の問題などに口うるさい。その辺りの苦労話も聞きたいのですが、次のテーマは、原さんが言われた情報であります。「SCENE」は20万部発行で、道外に40%配布しているそうです。活動をどのようにPRするか、ノウハウがあればお教えください。今、佐川さんが、NPOを興したいと話されましたが、中間法人という位置づけと、まちづくりにおける情報の発信についてお願いします。 原(パネリスト) 中間法人についてですが、元々シーニックバイウェイ北海道の話を進める中で、支援組織を作ろうという考えがありました。支援の仕方は、各ルートと全体とで線を引いています。シーニックバイウェイ支援センターは全体を支援し、外国人観光客を含めシーニックバイウェイ北海道全体のプロモーション等をします。組織形態として中間法人を選んだ理由は、まず設立が簡単だからです。中間法人は省庁の認可がいりません。株式会社と同様に登記すれば、極端な話、1週間で作れます。NPO法人と異なる点は、NPO法人は一定の会費を納めた人は、必ず会員として入れなければならない。中間法人は、拒むことができます。我々は企業的な運営を考えていたので、色々な人の意見を聞くことは必要ですが、フットワークの良い運営形態として中間法人を選定しました。ただ公益法人ですから、儲かっても分配はできず、儲かった分は、設立目的に沿った公益的な事業に使います。 広報については、さほど特殊なことではなく、新聞、TV等に対してメディアリリースを一生懸命、日々行っていいます。おかげさまで、一切出費なしに、様々な番組に取り上げられておりますので、日常なメディアリリース活動が重要であると思います。 最近、私が学生や企業を含め色々な方々と接する中で感ずることとして、利己的な行動をする人がとても多くなっていることです。もっと利他的な人たちが増えるような活動をしていかないと、いくらまちづくり組織を立ち上げても、なかなか上手くいかないだろうと感じています。では、どうやって利他的な行動をする人を増やすかと言えば、一つは学校教育、社会教育を含めた教育、加えて政策的な誘導だと思います。ここでは自治体の力が非常に大きい。 学生や企業の人にしても、公的な仕事に加わる際、きっかけは楽しいからという理由で参加するのはいいのですが、楽しみから昇華して、公的な役割を担う充実感といった方向に進む仕組みが必要であると強く思います。すぐに達成する手段はないので、色々な方が、その場に合わせて努力するしかないと思いますが、装置を作る以前の問題がかなりあると感じています。 田村(コーディネーター) それは3番目の議論としましょう。FMはまなすもNPOですね。これらを上手く使いながら、情報を発信する。プラス、学生たちの情報収集力や発信力は爆発的なものがありますから、岩見沢は環境が整っているようですが。 太田(パネリスト) 先ほどは時間がありませんでしたので、語りきれなかった部分について少し注釈を加えさして下さい。私が話してきましたNewPPPとRFPと田村先生の作られた資料との関係を、ここで少し整理させてください。 田村先生の資料にSocial Capital・企業の信頼(CSR)・行政の権力といったキ ーワードがありますが、NewPPPとRFPの考え方の根底にはこの3つのキーワードが深く関わりを持っているのだと思っています。ただし個人的には「行政の権力」の意味するところは正確には「行政の意志もしくは誇り」と解釈すべきだと思っています。Social Cap-italとは、北イタリアにおける家族的産業の分析から定性化された概念であり、訳すれば市民力となりますが、私が一番好きな日本語解釈は、「市民や地域社会がお互い様と言える関係」というものです。企業の信頼・CSR(Corporate Social Responsibility)は、要するに企業が社会に儲けさせてもらう代わりにどういう貢献をしなければならいか、あるいは今行っている企業活動は社会にとってどれだけ意味合いがあるかを問えということです。また行政の意志・誇りは、最近の風潮として「民が出来るものは民に委ねる」とされていますが、官が決して放棄してはいけないものがあるはずです。RFPの基本理念は、官がやるべきことをしっかり主張した上で、民意を最大限引き出すことを狙いとしている点にあります。RFPは推進すればするほど、基本的に「お互い様」という規範が、市民や市民の代弁者たる行政と企業になければ危険極まりない制度と化していくのかもしれません。規範が大前提であるという点を再確認させてください。この規範づくりを念頭において、教育や情報発信のあり方を考えていっていただきたいと思います。 田村(コーディネーター) 規範、啓発を全て含めて、情報をどのように作っていくかという重要なお話でした。次に佐川さん、お願いします。 佐川(パネリスト) 原さんの利己的な行動、太田さんの「お互い様」という規範的な観点ですが、大学は学生を使って色々試みていますので、その点が非常に重要であると思います。まず一つは、大学の単位を与える授業として、地域で活動させることを考えています。その裏には評価活動が出てきますので、その評価に伴って活動内容も定まってきます。今言われた規範は、授業の内容や評価に加わってくると思いますので、解決できるかと思います。ただ、例えばNPOを立ち上げ、学生たちの自由な発想で活動する場合には、やはり規範的なものを作っておかねばならないと思います。何のために行うのか、利益追求なのか、自分の専門性を高めるためなのか、しっかりとねらいを定めるための指導が必要だと感じています。 田村(コーディネーター) 私も学生を使うと、外部の人が「先生、タダの労働力があっていいですね」と言います。カチンときます。原さんからの利己的・利他的の話も含め、皆さんに短く発言して頂きます。 渡辺(パネリスト) 色々お話を聞かせて頂き、大変勉強になりました。今後の行政に早速役立てたいと思います。教育の部分で申し上げると、生涯学習の面から子供の教育、大人の教育、高齢者の教育と、年代によって様々だと思いますが、その原点は全て同じで、自分のことよりも公のこと、他人のことを思いやれるような教育を行うことが、最終的なまちづくり、人生の謳歌につながると思っております。その中にはもちろん企業教育もあるでしょう。一つ一つ頑張って、本当の意味で教育のまちを実現したいと思います。 原(パネリスト) 先ほど言い忘れたのですが、メディアに同じ情報を提供するなら、行政から出すよりも、市民の活動団体から出した方が、圧倒的に採用されるような気がします。これは不思議ですが。 これからの高齢化社会・少子化社会では、交流人口がとても重要だと思います。交流人口には、地縁・血縁のない人が入ってきます。ある意味、新しい信頼のシステムを地域に作らなければならない思います。方法は、一緒に働くしかありません。最近良いと思っているのが、シーニックバイウェイ北海道の活動で企業に協力をお願いするのに、行政職員、活動団体住民等が、一緒に企業をまわることです。何と言っても行政職員が電話をしますと、企業はだいたい会ってくれますので、いろいろが折衝がしやすくなります。企業の協力を得られない時もあります。でも、上手くいかなくても一緒に働くことから信頼関係が生れると思います。 また、活動団体の中に、自治体職員が個人として加わっているグループもあります。ここは結構上手くいきます。このような仕事を越えて活動している行政職員に、理解ある上司が重要だと思います。例えば、青森市は、プロジェクトごとに参加したい職員に手を挙げさせてチームを作っています。また、和歌山県では、建設課の職員が観光プロジェクトの職員を兼ねることができます。そういったことを組織的に行っていくと、面白いプロジェクトが成功すると思います。 佐川(パネリスト) IーBOXの説明をします。これは、岩見沢のIを取って、岩見沢の地域マネジメントセンターを大学の中に作りたいと思っていました。小さなサービスステーションを駅舎に作り、サテライトとして機能させたいと思っています。学生の活動を、IーBOXを通して地域の皆さんに提供したい。教育大学がなぜここまでやるか、というご意見もあるかと思いますが、教育大といえども、5キャンパスを維持していくためには、それぞれの特徴を出すことが大前提です。我々がやれるところはやれるだけ、どんどん取り組もうという気持ちを持って進めています。今日ご指摘頂いた事項についても、これからじっくり考えて進めさせて頂ければと思っています。 太田(パネリスト) 多くの地方都市は人口が減り、産業の成長力は弱まっています。今や「まちづくり」ではなく、むしろ「まちたたみ」の時代に入ったと思うべきです。「まちたたみ」の時代を迎え、岩見沢には大きなバックボーンがあるのだと実感しています。何度も紹介した空知信金という確固たる地域金融があることと、首長が“破天荒”な方であること、言い換えればとてつもないリーダーシップを持ったトップがいること、若手の業界人が懸命に勉強されていること。これらの事実は紛れもなく、地域再生の大きな可能性・潜在力を持っていることに他ならないと思います。駅舎の大学キャンパス化もRFPでトライして見たらどうでしょうか。最後に綺麗な「まちたたみ」に向かって、このシナリオを資金調達、ファンドのあり方までしっかり考え、是非実行していただきたい。あくまで「個から全体へ」の可能性を信じ、最後までやり切る強い意志力を持っていただきたいと強く思います。 田村(コーディネーター) まとめに入りますが、たくさんの要素が出てきていると思います。岩見沢市の事例を通しても、様々な視点の切り口があります。本日、北海道中から来られた方々も、地域の特徴を醸成していく際に、公だとか民だとか分けて議論するのではなく、公は経営者であると思えばいい。民も、まちづくりに関わるのは多様なはずですから、太田さんが言われるように、生半可な気持ちではケガをします。しっかり考えて起業する。この辺り、プロの力を借りねばならないと思います。金融等も含め、組織が横にネットワークすること、まさに連携することの重要性があると感じました。個から全体へというお話もあり、情報の出し方、情報の共有を語る上で、公と民を区別する必要はなく、公も一つのまちづくり団体、民の中にもたくさんのまちづくり団体があって、どの方向へ持っていくかは、市民から公選で選ばれたリーダーの仕事であります。 拙いまとめでありますが、第二セッションを終わらせて頂きます。どうも有り難うございました。 |
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