テ ー マ 解 説

農業を軸とした新しい都市の創成〜新農業都市の提案

北海道都市地域学会会長
北海道大学農学部教授 淺 川 昭一郎

 日本の都市では多くの場合、市域に農地や農業集落を含んでいます。一般に、そこでの農地は産業としての都市近郊農業の場であると共に、都市に貴重な自然や防災空間を提供し、景観や市民農園などレクリエーションの場となる生産緑地として位置付けられてきました。しかし、これは主として大都市の視点からのものであって、広範囲の農業地域を含み、農業サービス施設や農産物の集積地として発達した市街地を有する中小都市での農業・農地の意味はこれにとどまらず、都市の成立に大きくかかわるものと思われます。
 情報化が進み、車の普及により交通条件が飛躍的に改善されたなかで、農業地域でも都市的生活様式が普及し生活の質が求められています。また、食の安全と安定供給が求められ、農産物の生産と消費との結びつきに関したさまざまな交流が始まっており、新たなアグリビジネスの展開も期待されています。そこでは、産業としての農業の再確立と自然との共存、地場産業の発展と形成、開かれたコミュニティの再形成、地域文化の醸成と発信など、多くの課題があります。
 農業を基盤とし、この面で多くの実績を積み重ねている深川市で開催される今回の北海道都市問題会議では、@安全・安心な農業、国際競争力をもった強い農業、スローフード・フェアトレード、グリーンツーリズムなど、農を取り巻く課題と潮流の変化、A人口の減少と少子高齢化、逼迫する財政問題、市町村合併、地方分権化への対応と市民主導のまちづくりをせまられている北海道都市の課題を考え、B農をキーワードとして地域情報化をふまえた新たな都市と地域の創成を提案したいと考えています。
 基調講演をお願いする北海学園大学の太田原高昭先生には、「食」と「農」から“まちづくり”について広い立場からお話いただき、パネルディスカッションでは、各パネリストのご専門や活動に関した貴重な話題をベースとして、コメンテーターや会場からの質疑やご意見も交えた活発な討議を期待しております。
 また、翌日には、新農業都市に関した交通問題とコミュニティビジネスについての北海道都市地域学会セミナーが開催されます。併せてご参加いただき討議を深めていただければ幸いです。


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