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テ ー マ 解 説 北海道都市学会会長 矢 島 建 |
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皆様、おはようございます。本日のテーマについて述べさせていただきます。
第1回の都市問題会議が昭和49年に滝川市で行われてから、今回はご案内のとおり28回目となります。昨今は、“市民と行政の協働”という言葉がよく聞かれます。都市問題会議はまさに、学会と行政との協働作業として、もう30年に亘って行われております。学会が市民を代表しているとすれば、市長会は行政を代表するという意味においても、協働作業を行ってきているわけです。 当時、都市は拡大するという前提がありました。わずかに例外はありましたが、人口が伸びていくと言った方がいいでしょうか。その中で、協働で、都市の抱える問題の解決に何か役立てればと進めてきました。しかし、「都市が蘇るか」という今回のテーマは、まさに蘇らねばならないわけですから、都市が縮小していっていること、そこにある様々な問題が顕在化してきているということではないでしょうか。特に、それが地方において明瞭になってきています。 都市については一般の説として、人と情報が集まり、それらが交流する。その交流が活発なところには投資が行われる。すなわち、活発な交流の場所が都市とされています。現在、国などの認識では、世界的にみて日本の都市の位置が相対的に落ちてきたことは否めない、それゆえ都市でいろいろな問題を起こしている、即ちそれが日本の問題であり、従って再生しなければならないということであります。言ってみれば、日本の都市の現状で国際競争に打ち勝っていけるのかということです。もう一方では、それを活性化し、民間の投資が行われるには、いわゆる土地の流動化・有効利用が必要であり、これに対する要請もあります。 そういった中で、2年程前でしょうか、首相を本部長とする都市再生本部の設置を閣議決定し、国全体を挙げて展開しているのはご存知の通りです。そこで、さて私どもの身の回りではどうだろうか、うまくつながっているのだろうか、という疑問があります。普通、都市を大掴みするのに、人口何万の都市ですと言うのが分かりやすい指標です。財団法人日本統計協会では、2030年まで、四半世紀先を見越して、それぞれの都市の人口がどうなるか推計しております。全国に3,229の市町村があり、そのうち86の市が人口増加基調にあります。従って、残りはどんどん下がっていくと推計されています。道内には212の市町村があり、市の数は34です。必ずしも市すなわち都市とは言いませんが、代表しているとして申し上げると、34市のうち、たった2つが人口増加基調にあると予測されています。 人口の推移を5年毎に捉えており、全道人口そのものも下がるし、市に集まっている人口も減っていく中で、今までに人口のピークが過ぎたのは25市あります。もうそろそろピークを迎え、これから減少する市が2つほどあり、差引すると7つほどの市が何とか僅かずつでも人口が伸びると予測しています。推計方法に議論も出るでしょうが、単純に見れば、こんな状態で道内の地方都市はどんどん小さくなっていくのが数字で明示されているわけです。これでは道内の地方都市ははどうなっていくのかと極めて不安になってきます。2年少々経って、今年8月、国土交通省から重点施策を取りまとめ、今後の施策展開の方向性が8つほど示されております。その7番目に、需要の拡大など経済の活性化、地域の基盤強化の施策を打ち出しており、都市再生の新たな展開をしますと言っております。ごく最近には、これは国土交通省だけでなく、都市再生本部から発表されましたが、全国で171の都市再生モデル調査を行うということです。道内からも函館を含む10ヵ所が選ばれました。国も自ら考えている地方には、手を差し伸べようというスタンスです。 どのような地方都市の再生のシナリオが組み込めるのか、どんな未来が描けるのかが非常に気になるところで、28回目を迎えた函館市における都市問題会議では、何とかそこにたどり着きたいと考え、本日のテーマを設定しました。今回は都市環境デザインがご専門で、かつて行政にも身を置かれた経験のある大阪大学大学院 鳴海邦碩教授に、「行ってみたい都市の形成」として、特に都市ツーリズム(都市観光)の時代の中で、都市再生の行方をテーマに基調講演を行っていただきます。 午後からは、パネリストの方々にご登壇いただきます。まず、地元で事業者として赤煉瓦倉群を再生してこられた金森商船 渡邊社長に今までの事例を話題提供していただきます。また、地元で活動する市民として、折谷様から市民活動を踏まえた、協働時代における住民参加のあり方についてお話をいただきます。次に、道内、特に地方・地域で都市の再生に関わっておられるまちづくりコーディネーターの吉岡様に、地域資源活用と地域再生の観点からお話しいただきます。長岡様には国の政策投資に関わってこられ、北海道だけでなく、道外を含めて様々な都市の活性化プロジェクトに対し、国として政策的な投資等、都市経営のサイドからものを見てこられた立場から、戦略的なお話をいただく予定です。最後に、私ども都市学会の都市研究者として活躍いただいている北大大学院 筑和教授に、専門の都市文化の切り口で都市の活性化・再生に向け、位置付けと今後の展開についてお話をいただきます。 パネリストの皆様方から話題提供をいただいた後、後半は大いに議論を深めてまいりたいと思います。コーディネーターは、北海道都市学会理事で、観光教育や観光経済が専門の札幌国際大学 市岡助教授が務めます。また、地元函館で都市行政に大いに関わっておられる函館工専 韮澤教授にもコメンテートしていただき、基調講演をお願いした鳴海先生にも加わっていただきながら、議論を煮詰めてまいりたいと思います。会場にお集まりの皆様方にも、大いに参加していただき、ご意見等をいただいて、未来に向けた地方都市の再生のあり方に対する提案が一つでも見つかればと考えております。 今日は朝から夕方まで、一つのテーマで詰めていく形式ですので、最後まで皆様のご協力をお願いしたいと思います。そして、議論の結果を持ち帰り、それぞれの地域や職場などでの展開に少しでも役立てば非常に有難いと思います。本日はお集まりいただき有難うございました。 |
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