ま  と  め

北海道都市学会理事 企画委員長  淺 川 昭一郎

 本日は熱心なご参加をいただき、誠に有り難うございます。実行委員の一人として、厚くお礼を申し上げます。
 冒頭のテーマ解説で会長が申し上げたように、この都市問題会議は、これまでそれぞれの時代に合ったテーマ、開催市の抱える課題、さらに道内の各都市に関わるテーマを選んできました。今回も小樽市開催ということで、当市の抱える課題と全道の都市の課題を考えながら、企画委員会でテーマを検討してきました。最初、小樽はやはり特殊な都市なので、テーマを幾つかに分け、分科会形式で議論してはどうかなど、いろいろなことが考えられました。しかし、これまで分科会形式をとったこともありますが、議論が分散するなど欠点があり、今日は一つのテーマで通して参りました。様々な切り口があり、一つにまとまるのは難しかったでしょうが、小樽市の抱える課題から、全道の都市に共通する大きなテーマとして、充分に活かされた内容ではないかと考えております。
 総括というより、私の感想を幾つか申し上げます。小樽市のまちづくりは、約30年前の小樽運河埋め立てを契機に起きたいろいろな問題そしてそれを議論し、解決しながらここまで来られた成果をどう評価するかが、バックにあったと思います。直接的評価ではありませんが、「交流と文化」という切り口で、現状まで見えてきたのではと思います。
 その一つは、約900万人という多数の観光客が来る道内で最も大きく、目玉となる観光地に成長したわけですが、その中で生活する市民の皆様方と観光で来られた方との関係も関心がある事柄だったと思います。本日のお話の中には、幾つか問題点も見受けられ、今後の課題も挙げられました。
 さて、観光客は小樽にどういう魅力を感じるのか。住民はどう感じているのか。アメリカのカプランという観光心理学者が「安らぎのある空間」として幾つか挙げています。まず、魅力があって楽しいことが第一です。次が楽しい活動ができるような環境があるということです。もう一つは、その場が周りとつながりがあるということであります。つながりというのは、空間的な広がりもあるしまとまりもある。そして時間的なつながりも含むと言っております。そしてもう一つは一般的なことですが、日常の都市生活の疲れを癒してくれるような異空間がある。都市から離れて自然地域に行けば当然全く違う空間がありますが、都市の中でもそういう空間が求められる。それはまさに、歴史的な空間であり、そこに醸し出される雰囲気や物語など、それぞれの人が独自に抱くものであります。私はそれに加えて、ファビオ先生のお話にあった広場のような人との交流が非常に大きな魅力であると感じます。小樽はそういう場所を持っており、度合いや内容は違っても道内の都市それぞれも持っているはずだと思います。それらをどう発見し、育成していくかが非常に大事であると感じました。
 具体的な問題としては、地域の様々な資源を活用し、魅力ある都市づくりをしていくことが言われました。例えば観光を考えた場合、従来のバスツーリズムではなく、もう少し個別な最近は持続可能な観光という言葉もありますが、長く続き、しかも地域の人たちと交流できるような観光が求められています。例えば洞爺地区では、エコミュージアムとして様々な取り組みをしようとしていますが、都市であればアーバンミュージアムと言えるかもしれません。いろいろな歴史的な空間、資源等を中心に地域の方々がそれに学び、継承していくことを通じて、観光客とも交流を深めることが大事になってくると感じました。外来の方と住民が、相互に尊重し合いながら交流できる環境づくりをぜひお願いしたいと思います。
 札幌の姉妹都市であるアメリカのポートランドは、ウォーターフロントの開発など都市の再開発で成功した都市として知られています。ある人がポートランド市のことをアーバンテーマパークと呼んでいます。それは有名なバラ祭りだけでなく、様々なイベントを中心に都市づくりをしてきたからです。小樽市の場合は、海に向かって山が扇形に広がる劇場のような都市と言われるように、非常によいシチュエーションがあります。その舞台となるのが海岸近くの小樽運河近辺だと思いますし、それに向けて観客席が広がっています。その意味では、まさに劇場都市でもありますが、今日のお話の中で、小樽運河を中心に観光客が集まっているが、それを都市全体に広げるための工夫が紹介されました。「雪あかりの路」のようなイベントが観光客と住民をつなぐ手段となり、非常に興味深く伺いました。小樽市には、昔からお祭りがたくさんあるそうです。そうした地域のお祭りと全市的な大きな新しいイベントが一体となり、周辺地域とつながりを持って発展していけば素晴らしいと感じました。
 最後になりますが、「交流と文化、そして豊かさ」というキーワードでしたが、ファビオ先生からは、文化の概念が曖昧ではないかというご指摘がありました。確かに、これまでの議論の中には、生活文化をはじめ芸術性の高い文化もあります。北海道の文化、都市の文化とは何かという切り込みが少々足りなかったので、次への課題になると感じました。
 本日は基調講演をいただいたファビオ先生はじめパネリストの皆様、コメンテーターの先生方に厚くお礼申し上げます。また、会場の皆様には本日の議論が大いに刺激になり、あるいはヒントとなって、それぞれのまちづくりに活かしていただければと期待しております。今日は本当に有り難うございました。


北海道都市問題会議の目次へ戻る
前のページへ戻る 次のページへ進む