ま  と  め

北海道都市地域学会企画委員長
札幌学院大学経済学部教授  平 澤 亨 輔

 今回のテーマは北海道に多くみられる農業地域の中にある都市のあり方を考えようという問題意識から「農業を軸とした新しい都市の創成〜新農業都市の提案」が選ばれた。
 まず、北海道都市地域学会に浅川会長から簡単なテーマの解説があった。田園都市などの例を挙げながら、北海道には農業を主たる産業とした都市があり、そうした都市を例として取り上げ、農村と都市の融合、新しい農業都市という概念を確立することが重要だと述べた。
 その後に北海学園大学経済学部の太田原教授から基調講演があった。太田原教授は、効率性重視の社会の見直しや農業の持つ外部性を重視することが重要である。大規模な農業や広域的な流通ばかりでなく、地産地消などもすすめ、中小企業や小農の育成をはかることが必要であり、それは内発的発展にもつながる。またスロー・フード運動にみられるような安全性や文化も重視しなくてはいけないと述べられた。そのほかに食教育により子供の食を見直していく必要があると述べられた。

 続いて午後にシンポジウムが開催され、まず深川市長から深川市の現状と取り組みが簡単に紹介され、米作りを中心とした農業を中心にまちづくりを行う「ライスランド深川」構想やグリーン・ツーリズム、「元気村・夢の農村塾」のことなどが簡単に述べられた。 続いてコーディネーターの太田氏からテーマの解説があり、@ 北海道の農業が、いろいろな問題を抱えている。今日のシンポジウムは、これまでなされてきた議論とは明らかに異なる視点、すなわち都市サイドにたって、都市・地域が持続可能な自立をしていくための視点に立った議論を展開させたい。A持続可能な都市・地域の自立のためには「交流」の概念を更に超えた「融合」の概念と仕組みが必要ではないか。具体的には農業振興法と都市計画法の個別法の隘路を「まちづくり条例」等の条例で補完している。法制度の側面においてすら融合がなされなければならない、などの考えが述べられた。
 まず深川市の拓殖短大の橋本信教授から深川市でのグリーン・ツーリズムの実践例が報告された。農業生産ばかりでなく、プラスアルファが必要であるという観点から地元の代表と「アグリ工房 まあぶ」を立ち上げ、収穫やカヌーの体験、組立ログハウスなどの試みが行われた。それがさらに本業に跳ね返り、拓殖短大の環境学科にグリーン・ツーリズム概論という科目を開講するまでになった。
 続いて地元の「元気村・夢の農村塾」の渡辺氏からその取り組みが紹介された。農業を体験した高校生が心の癒しを得た例などが紹介された。このほかに他地域から農業に就農した方の経験などが語られた。
 続いてフリーキャスターの林美香子氏から、スライドを用いながらグリーン・ツーリズムの紹介があった。また、スローフード運動について単に食べる運動ではなく、地域を愛し、地域を育てる運動であり、都市と農村の交流というだけでなくそれ以上のものを目指していると述べられた。また農村景観を大事にしてほしいと述べられた。
 掛川市の小松助役は、農業を考える場合に、農地、農民、農業、農村、農家、農協という観点から考えなくてはいけないと述べ、農業を助けるためには個性化を行う必要があり、農家と農民という点では規模拡大、また担い手が少ない現状では、協業化が必要である。また生産消費地化や、農地の公有化が考えられなくてはならないと述べた。
 北海道大学の加賀屋誠一教授からは農業都市のあり方について循環型システムの考え方を紹介した。また現在、都市は都市計画法、農地は農振法で規制されているが、都市と農村を同じ法律で考える必要があるのではないかと述べられた。
 こののち、議論が行われたが、一つの中心的な議論は、都市は都市計画法で規制され、農地は農振法で規制されており、この二つを統一的に計画し、都市と農村を融合できないかというものであった。この点では、コーディネーターの太田氏と小松助役の間に考え方の違いが見られた。
 また、これらの議論の中で、「人づくり」が重要であると認識させられた。やはり、地域を支え、活性化していくには「人」の活動が必要であり、それを支える「人」をいかに育成していくかが重要なポイントである。


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