あ と が き

 初めて経験する北欧行政視察に緊張と不安、希望を抱いて10月17日新千歳空港を出発しました。思いがけなく第27回海外都市行政視察調査の機会を与えていただき、少子化対策及び高齢者福祉施策、産業クラスター、環境保全対策及び観光振興とコンベンションなどヨーロッパにおける取組みについて、多くのことを学ぶことができた。
 秋田富良野市経済部長を団長とする総勢6名の少ない視察調査団のため、だれかが一声かけると直ぐ集まるという非常に和やかな雰囲気の中で、行政視察の責任を感じながら効率よく無事目的を果たすことができたものと考えている。
 視察した都市はいずれも道内の都市が抱える課題についての先進都市であり、じかに見聞できたことは民族性、文化の違いを超え、今後のまちづくりに生かされるものと思う。
 訪問都市における調査の詳細については、団員の皆さんで分担し本文で掲載しているところであるが、特に印象が強かった事項について記述する。
 最初に降りたデンマークのコペンハーゲンでは、石造りの重厚な建物、歩道、自転車道、車道と完全に分離された街並みに歴史と伝統、民族性、文化の違い、宗教がいかに市民生活に密着しているかを強く感じた。次に訪れたフィンランドでは、森と湖の国と言われるとおり、国土の80%が森林と湖沼に覆われた自然豊かな国で森に囲まれた静かな住宅と緑豊かな公園、派手な看板や電柱をほとんど見かけないすっきりとした街路、少ない日ざしを浴び、のんびりと散歩を楽しむ市民の姿は高福祉国家であることをあらためて印象づけられた。
 翌日から視察調査の公式訪問がはじまり、エスポー市では市長さんには面会できなかったものの「ゆりかごから墓場まで」という言葉で表されるとおり、子どもを国の宝物として大切に育てようという先駆的な政策を取っており同時に高齢者の経済的自立、一般社会から孤立させない政策を実践している。しかし、ここにも実施段階で組織の改革を必要とし、現在、検討されていることに戸惑いを感じた。続いてスウェーデンのカルマル市、デンマークのカルンボー市及びスイスのルガノ市と、いずれも市長さん自らの暖かい歓待を受け、団員の真摯な質問によって、国際交流の場にもふさわしい視察調査ができ、市長さん方に深い感銘を与えたのではないかと思う。
 スウェーデンでは、我々が訪問したストックホルム市内でその1ヵ月前にリンド外相(当時)が買い物中に男に刺され死亡する事件が発生、また、その数日後には、欧州統一通貨ユーロの導入の是否を問う国民投票が行われ、結局ユーロ導入が実現しなかったばかりで、将来的な経済政策が注目されるところである。
 さて、スイスで観光都市ルガノ市長に、観光の振興について尋ねたところ「日本人は仕事が忙しいし、古いものを直ぐ壊してしまう。痛ましいことだ」とポツリ。石造り文化の歴史と伝統を誇るヨーロッパ人の目にはそのように映っているのかも知れない。しかし、日本には日本の文化があり、世界に誇れるものが数多くある。日本の国家戦略である観光立国日本にふさわしい国づくりと情報の提供が望まれる。
 この報告書は、団員から寄せられた原稿、資料をもとに作成したもので、現在、道内の各都市が直面している諸問題への対策に役立つことがあれば光栄です。
 最後に、全員無事目的を達成し帰国できたことは、秋田団長をはじめ団員各位と添乗してくれた田中氏の協力の結果であることに深く感謝申し上げ、編集後記といたします。

平成16年2月
北海道市長会事務局参事 小森 孝徳